【Memory of 『N』】第九話 父 Part4

七賢者「…ゲーチス様。」

この部屋を去ろうと、ドアノブに手をかけたゲーチスを七賢者は呼び止めた。

ゲーチス「…どうした?」

呼び声に反応しゲーチスは振り返った。…そこには、不安そうな顔をした七賢者の一人がいた。

七賢者「…一つお聞きしたいことがあるのですが。」

ゲーチス「なんだ、何が聞きたいのだ?」

七賢者「…ゲーチス様は、ご子息の事を、N様をどう思っていられるのですか?」

…この七賢者には、確か子供がいたな。そんなことを、ゲーチスはふと思い出した。…だがゲーチスにはこの質問の意味が分からなかった。

ゲーチス「…Nの事か?」

七賢者「ゲーチス様は、ご子息に特別に目を付けていらっしゃいますが、…その、扱いが手厳しすぎるような…そんな気がしまして。」

七賢者の一人は、遠慮しがちにそういった。…だがゲーチスは、その賢者の斜め上を行く言葉をつづけた。

ゲーチス「…あいつのことなど、知ったことではない。」

七賢者「!?」

ゲーチス「…理想と夢の中でしか生きられない永遠の少年。井戸の底の蛙。…そして常人にはない力をいくつも持つ化け物。…そんな儚く危険な存在は、私の役にさえ立っていればいい。何、役に立たなくなったら、切り捨てればいい話だ。」

七賢者「…切り捨てる…!?それに、化け物ですか!?」

…こいつは、何もわかっていないらしい。だから、はっきりと言ってやらないと若ならないみたいだ

ゲーチス「化け物だ。…何か私が可笑しなことを言ったか?」

七賢者「い、いえ、何も。」

七賢者の一人の顔が、急に青ざめていくのを見た。…これ以上このフロアにいる理由などない。

ゲーチス「では、私はこの奥で色々と準備しなければいけないので。あとは頼みましたよ。七賢者。」

七賢者「か、かしこまりました!!」

そういい、ゲーチスはドアノブをひねり、フロアを出て行った。



ブラック「…大体予想通りだが、実際に見るときついものがあるなぁ。」

ドアノブに残された記憶を読み取り終えたブラックは、汗だくになりその場に座り込んでいた。…その様子を見ている野生のポケモンは、ブラックから距離をとり心配そうな顔でこちらを見ていた。

ブラック「…あ、ごめんね。…そういえば、スプレーかけていたんだな。」

そう呟き立ち上がったブラックは、ハンカチを取り出して自分の汗を拭きとった。

ブラック「…さて、あの部屋にもう一度行かなくてはな。」

そういいブラックは立ち上がり、Nの部屋に向かって歩き出した。



N「…あのポケモン、人間のせいで父親と母親と離ればなれになって、傷ついていた。」

Nは自分の部屋にいた。その顔には疲れが浮かんでいた。部屋にはゾロアも一緒にいた。先ほどまでこの部屋に幾体もの傷ついたポケモンが運び込まれていた。そしてそのポケモンを、Nが持っている力の一つ、『ポケモンの傷を治す力』で治療が行われていた。…そして長い時間が経ちやっと治療が終わって一息ついている所であった。

ゾロア「…そうだね、N。」

N「…だけど、どのポケモンもお父さん、お母さんの話をしているときは、すごく楽しそうだった。」

今日のNは、とても寂しそうな顔をして、どこか遠くをみている。…そんな感じであった。

ゾロア「…そりゃあ、誰だって、両親はかけがえのない存在だよ。」

N「…どんな感じに、かけがえのない存在なの?」

…Nの両親は、お父さんはゲーチス。お母さんはわからないらしい。…それじゃあ、かけがえのない存在と言われても、ピンと来ないかもしれない。

ゾロア「そうだね…。両親は、子供を厳しくすることもある。…けどそれは、子供を思ってそう言っているのであって、けして嫌いでそう言っているわけじゃないんだ。その子がもっと立派で逞しく、そして強くなるためにそういっているんだよ。」

…おらも短い期間だったけど、そうやって親からいっぱいよくしてもらった。誰だってそうだと思った。

N「…強く、するため?」

Nの視線は、おらの方をしっかりと見つめていて、離さなかった。いつも以上におらの言う一言一句を真剣に聞いていた。

ゾロア「そうだよ。親は子供には絶対に優しいんだ。かわいくて、たまらない存在なんだ。とっても好きで、大切な存在なんだ!…誰も、子供の事が嫌いな親なんていないよ。」

元気のないNが元気になるように、元気いっぱいに楽しそうに話した。…それに、おら嘘を言っているつもりもないし。これでいいと思った。

N「…それは、トモダチ以上に?」

ゾロア「そりゃ勿論さ!!子供を大切に思う気持ちは、トモダチのそれ以上だよ!!」

…その言葉にNは何か吹っ切れたような顔になり、顔を改め、言葉を返してきた。

N「…じゃあ、じゃあゾロア。」

ゾロア「…。」

…この質問には、絶対に真剣に答えないと思った。だから、おらも気合を入れてNをみた。

N「…どこにいるかわからない僕のお母さんも、僕の事をとても大切に思っていてくれてるのかな?」

ゾロア「そりゃ勿論さ!N!!」

N「…じゃあ、じゃあさ、ゾロア!!」

ゾロア「…。」

…今度は、もっと真剣で、もっと重い顔でもっと重い言葉を投げてきた。

N「…ゲーチス様も、…お父さんも、僕の事を大切に思っていてくれてるのかな?」

ゾロア「…。」

…正直、即答できなかった。ゲーチスは、どうもNを厳しくしている節がある。…だがその厳しさは、親が子供に向ける厳しさとは違う、何か、侮蔑や憎悪が含まれている気がしてならなかったのだ。

ゾロア「…当り前だろう。…ゲーチスは、Nの事を思って色々としているんだよ。」

…正直、この言葉は嘘だった。…だがこういわなければいけないと思った。…出ないとNが壊れてしまう。…そう感じた。…Nは、おらの言葉と顔を見て少し安心したような顔になった。…やっぱり正直に言わなくてよかった。

N「…僕、最近駄目なんだ。…ゲーチス様がこの部屋に沢山の傷ついたポケモンや、心に傷を負ったポケモンを連れてくるのは、僕に苦痛を与えるためだって…。僕に大変な思いをさせて、僕を辛くするためにやっているって、そう思えてきちゃって…。そう思い出したら、止まらなくなっちゃって…。」

Nは言葉を段々早めて行った。…言葉が早くなるにつれてだんだん声も大きくなっていき、感情が高まっていくのを感じた。一気にまくし立てて言わないと、言えないような心の底の言葉を振り絞っているようにも思えた。
…つまるところ、心が今荒れて揺れて、苦しんでいるということだ。

ゾロア「N…。」

こんなに目の前で大事な友達が苦しんでいるのに、おらは何もせずに、ただ見守っていることしかできないのか?…それはやだ!!もうあの森の時みたいに、大事な友達を失いたくない!!

N「僕、いけない子だよね?そんな大切な存在である親の事を、そう思ってしまうなんて、歪んでいるよね!?僕は…、僕は!!」

Nの目は完全に開かれ、顔は恐怖と絶望にあふれていた。
…そんなNを見ていたら、気が付いたらおらは動いていた。

ゾロア「N。」

N「…ゾロア。その姿は?」

Nの前に立つのは、ゾロアではない。…その姿は、紛れもないゲーチスそのものの姿だった。

ゾロア「…私は、ゾロアではない。お前の父、ゲーチスだ。何を言っているのだ?N?」

…一度嘘をついたんだ。こうなったら徹底的に嘘をついてやる。そう思い、自分の姿をイリュージョンを使い、ゲーチスにした。…例えおらが偽りをつづけた道化の存在でも、トモダチの、トモダチのNさえ元気でいてくれるなら、こんなに嬉しいことはない。

N「…ゾロア。」

Nの可笑しな顔が、元に戻っていくのをみて感じた。…よかった。
その後おらは、Nの近くに近づき、膝をついて頭を優しくなでてあげた。…昔おらがお母さんにやってもらったように。

ゾロア「…これだけ辛く大変なことが続くと、弱音を吐きたくなる。…だが、それが普通なんだ。当たり前の反応なんだ。…だから今夜、お前の苦しみを、私が受け止めてあげよう。…私が聞いてあげよう。…だから今は、思うが儘に、思いっきりたまった思いを吐き出すと言い。」

…そして、おらが昔お父さんにいってもらった言葉を、そのまま口にした。…その言葉に、Nの顔が、今度は泣き顔に変わっていった。

N「…お父さん。」

そういうとNは、おらに抱き着いてきた。力強く。

N「お父さん!!うぁああああああ!!」

Nは泣いた。
思いっきり泣いた。
力の限り泣いた。
…今まで聞いたことのない声と大きさで、泣いた。

ゾロア「…すまないと思っている。…お前に辛い思いを沢山させてしまって。…だが、それもお前がポケモンたちと、より深く心を通わせるためにお前にさせてきたのだ。…だからお前は、どの人よりもポケモンの痛み、苦しみをしり、そしてそれを救うことのできる人間になってきている。…私はとても嬉しいぞ。」

N「僕は…僕は!!そんなことをしなくてもいい!!そんな世界に生まれたかった!!こんな多くの悲しみだらけの世界なんて、僕がいるべき世界じゃない!!」

ゾロア「N…。」

N「僕は、お父さんが思っているような、英雄なんかじゃない!!」

…きっとその言葉が、一番Nの言いたかった言葉だったんだろう。そう感じた。…Nはあの森の一見から、ずっとゲーチスに『英雄』の教育として、ほぼ虐待に近い指導と、ポケモンと話せる能力、治療する能力等々、開発をされてきた。…ずっと傍にいたおらがいうんだ。間違いない。

ゾロア「…N。」

…どう答えるべきだろう。…正直わからなかった。…だから、ごまかしごまかし言うことしかできなかった。

ゾロア「N。よく聞きなさい。この世には、悲しみが満ち溢れている。それはどうしようもないことだ。…だけど、それと同じくらい、楽しみも満ちているんだ。」

N「…うん。」

ゾロア「…そしてお前は、その幸せを、悲しんでいるポケモンに与えることができる。…それだけで、お前はポケモンたちにとっては、十分に英雄なんだよ。」

現にNの事を『英雄』というポケモンは多かった。Nのおかげで円満にことが戻ったポケモンもいたし。…何より昔森のポケモンを全て救ったのは、間違いなく『英雄』と誉るべき事柄だった。

N「…おとーさん。」

ゾロア「…私はいつでも応援している。お前が本当の英雄になる、その時まで。…だから今だけは、泣きなさい。甘えなさい。…心を緩めなさい。」

N「…うぁあああああん!!!うぁああああああん!!!」

…これからNがどうなるかは、おらにはわからない。…だけど、Nの傍にいつまでもいて、Nの心の支えになってやろうとその時誓った。


N「…ゾロア、僕は決めた。真の英雄になる。…必ず。この世界のポケモンの持つ苦しみを、全て解放して見せる。…その為なら、どんな試練だって、乗り越えてみせる!!…その為に、ゾロア、君の力も大いに借りたい。」

思いっきり泣いたあと、Nは立ち上がり一度部屋を出た。そして帰ってきたときには顔から泣きじゃくった子供の顔はどこかに消え、そこには決意にあふれた男の顔になっていた。…そんなNに、おらもやる気が出てきた。

ゾロア「当たり前だ。おらはNの力に絶対なる。Nの夢は、おらの夢だ。一緒にかなえよう、N。」

N「…ありがとう。ゾロア。」

そういい、二人はトモダチの証である握手を交わし、そして笑った。

N「…では、ゾロア。これを。」

そういうと、Nはポケットから何かを取り出し、こちらに差し出した。

ゾロア「…それは、『不思議な飴』?」

N「…そう、ゲーチス何故か僕に食べさせているのを、隠して少しとっといたものだ。…ゾロア、これを食べて進化してほしい。」

…急な展開に、頭がついて行かなかった。

ゾロア「…なんで、進化しないといけないんだ?」

N「…力を上げてもらう。僕の指導の下、ポケモンバトルに勝てるようになってもらう。」

ゾロア「…ポケモンバトル?」

N「…英雄になるには、強いポケモンと一緒にいて、それで戦いにかてないといけない。…ゾロア、君は僕の一番強いポケモンになってほしいんだ。」

Nの瞳は、決意に満ち溢れていた。…それに応えなくちゃと思ったが、いかんせん自信がなかった。

ゾロア「…一番。おらになれるかな?」

N「絶対になれる。僕が保証する。…そして、進化したら、イリュージョンの特訓も行う。」

ゾロア「イリュージョンの特訓?…何をするんだ?」

N「普通のポケモン以上に、イリュージョンを完璧に、そして長く維持できるようにしたい。…具体的に言うと、ダークトリニティの一人と入れ替わって1週間いてもばれないような位、精度の高いものを。」



ブラック「…だから、ダークトリニティが4人いたときがあったのか。」

Nの部屋で記憶を読み取ったブラックは、そう呟いた。

…一年前、ブラックが最初この部屋に足を踏み入れたとき、尋常でない気持ちを読み取った。…そして、ものに触れて記憶を読み取った瞬間、とんでもない気持ちになったものだ。
…Nの悲しみ、苦しみ、そして決意を読み取り、涙が止まらなくなった。
…叫ばずにはいられなくなった。
…そして思ったのだ。…Nを絶対に止めに行かなくてはいけなく、それができるのは自分だけだと。
…そして今、これだけ日時が過ぎてなお、記憶を容易に読み取れるほどに、この部屋には強い思いが込められていた。…むしろ最初に入った時よりも少し気持ちが落ち着いて、細部まで読み取りやすくなったくらいだ。そしてその細部を確認するために、今この部屋に来たのだから。

ブラック「…これでとりあえず、全て見た。…あとは、あそこに向かうだけだ。…N。」


…第九話 父 END
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まとめtyaiました【【Memory of 『N』】第九話 父 Part4】

七賢者「…ゲーチス様。」この部屋を去ろうと、ドアノブに手をかけたゲーチスを七賢者は呼び止めた。ゲーチス「…どうした?」呼び声に反応しゲーチスは振り返った。…そこには、不安そうな顔をした七賢者の一人がいた。七賢者「…一つお聞きしたいことがあるのですが。」...

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しばせんし

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Hyper-和食見習い小僧の20代が、遊戯王、ポケモン、その他生活の雑談を上げていくブログです。(^O^)/
何か変なところがありましたら、いつでも書いてください。迷惑コメントは容赦なくスパム

現在遊戯王でよく使うデッキは、
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               です(^O^)/


どうしたらスクラップの良さを残し戦えるかを考えています。
スカイプデュエルも、ツイッターか、コメントで相談してもらえればできる予定。

ポケモンは、とある人の動画をきっかけにやり始めました=^_^=
ウルガモスと、カメックスを
対戦でこよなく愛して使ってます。
いつか対戦実況動画とかとってみたいなとおもっていたら取れました。
ニコニコ対戦実況動画
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だけど第六世代になってから、色々と時間が足らない様子。

再現料理も、やりたい年頃。
こう見えても現役調理師なので、
料理スキルはあるはず。
何かしてほしい再現料理がありましたら、コメントお願いします<(_ _)>

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